『辻留 料理のコツ』(辻嘉一 著)

先日、NHKの『きょうの料理』で、故・辻嘉一氏の料理が
放映されると知り、楽しみにしていた。

『テレビ料理人列伝』(河村明子著 NHK出版)によると、
氏は同番組からの出演依頼に対して、大さじ何杯、小さじ
何杯と計量を出さねばならぬなら出ないと突っぱねられた
そうで、最終的に局側が折れての出演となったそうだ。
だから、氏がどのように料理解説をされたのか興味津々
だったのである。

だが、番組を見てみると、当時の再放送ではなかったので
残念だった。僕は辻嘉一氏の語り口を聞いてみたかったの
である。

辻嘉一氏は、僕が勝手に師と仰いでいる料理人である。
だが、残念ながら、氏の料理を食べたこともなければ、
『辻留』は京都伊勢丹の老舗弁当コーナーの仕出し
弁当しか食ったことしかない。

それでもやはり、勝手に師と仰いでいる。

というのも、僕が家庭料理としての和食に興味と関心を持ち、
そこに喜びを見いだすようになったのは、氏の著作の影響に
よるところが大きいからである。
その記念すべき出遭いの一冊目となったのが
『辻留 料理のコツ』(辻嘉一著 中公文庫)である。

この本に出遭ったのは、僕がまだ20代の学生の頃で、
さぁ、なんでまたこの本を手にしたのかはまるで覚えて
いないのだが、この本を参考に作ってみた「胡麻豆腐」や
「ぶどう豆」や「鰯の辛煮」は、それを作るのが面白くて、
作ってみたら美味くて「すげぇ~」。
書かれている蘊蓄や精神論にもシビレまくった。
そして、当時は中公文庫から色々と出ていた氏の著作を
読み、古本屋で氏の著作を集めたのだった。

まぁ、蘊蓄なんて知ってても仕方がないことが多いが、
料理というのは実際に自分で試してみることが出来る
から楽しい。
だから、氏の著作に紹介されている料理を、
手の届く範囲で色々作ってきた。
今年も「ぶどう豆」を炊くのが僕の年末の仕事である。

今回、改めて辻嘉一氏の著作を読んでみて、
僕が料理に対して常日頃心がけていることは、
その殆ど全てが氏の受け売りであることを痛感した。
「アンチ計量主義」、「お加減体得主義」も
「出来上がりを予想して、実際に味見をして決める」も
「手間暇をかけてあたりまえ」も、
その全てが氏の主義主張の別表現に過ぎないのだった。

所謂「刷り込み」というやつですな。

しかし、僕はそれは良い「刷り込み」だったと確信する。

僕は昨今の料理研究家諸氏の料理本を、
勿論、内容によるが、原則的に使う気にはならない。
素人向けに勝手にアレンジされたようなものはご免である。
ましてやライフスタイルの切り売りに興味はない。

手抜きもお手軽も不要。
知りたいのは王道。直球ど真ん中ストレートだけ。

残念ながら、中公文庫から出ていた辻嘉一氏の著作の多くが
絶版となっているようである。
特に『辻留 料理のコツ』が絶版なのは文化的損失である。
家庭料理がお手軽簡単ヴィジュアル志向になっている今日、
益々広く読まれるべき本であると確信する。

以上
(20070108 加筆訂正)

『中公文庫BIBLIO』から3点、再収録という形で出ていました。
めでたしめでたし。

『料理のお手本』、『料理心得帳』、『味覚三昧』

これらは所謂「レシピ本」ではないですが、
試してみる程度には料理解説も記載されています。


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訂正

辻嘉一氏の著作は、中公文庫で改版されたものが複数でていました。
検索不足でした。もうしわけない。
只今帰省中につき、正式な訂正は後日にいたします

初めまして!つい先ほどNHKの番組で辻嘉一さんの事を放映されていました。詳しく知りたく思い、検索した結果こちらのサイトを見ることができました。まだ見始めですが興味深く楽しいです

>おとと様
はじめまして。コメントを有り難うございます。
僕も先刻、録画してあったのを観たところです。
うーん・・・物足りないというのが正直な感想。
もっと氏が料理されているところを拝見したかったです。
「きょうの料理」で、もう一度拝見したいのは、
小野正吉氏と阿部なを氏です。

これからもよろしくおねがいします。
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